路線価という言葉は土地の話題になる際、耳にすることがありますがそもそも路線価とはなんなのでしょうか?路線価とは土地の公的な評価方法のひとつなのですが、少々堅苦しい印象を受けてしまうかもしれません。今回は路線価のわかりやすい見方やチェックポイントを解説していきます。また路線価を利用した計算方法の例についても解説していきます。
路線価とは
ここでは路線価について解説していきます。
相続税路線価と固定資産税路線価の違い
路線価には、相続税、贈与税の計算に使われる相続税路線価と固定資産税等の計算に使われる固定資産税路線価の2種類があります。それぞれ違う税金の計算の際に使用されます。
どちらの路線価も道路(路線)に面した宅地1平方メートルあたりの土地の評価額を示すものです。一般的に路線価というと相続税路線価を指します。
相続税路線価と地価公示価格との関係性
土地の評価額を調べる際に参考にする指標には、他にも、地価公示価格という指標があります。地価公示価格とは、国土交通省が全国に定めた地点(標準地)の毎年1月1日現在の価格を公示するもので、毎年3月中旬頃に発表されます。なお相続税路線価は、地価公示価格のおおむね8割であると一般的に言われています。
相続税路線価と実勢価格との関係性
土地の評価額の指標には、もう一つ、実勢価格という指標があります。実勢価格は実際の市場で売買された価格のことをいいます。
近隣の土地が過去にいくらで売買されたかを調べることは、土地の価格を決める際の参考になります。過去の取引価格の確認には国土交通省の土地総合情報システムが役に立ちます。
【参考】国土交通省:総合情報システム
http://www.land.mlit.go.jp/webland/
相続税路線価を利用する3つのシーン
ここでは相続税路線価を利用する3つのシーンを解説していきます。
①相続税の計算で利用する
相続税路線価は名前のとおり相続税の計算の際に利用します。例えば土地を相続する場合、相続税を支払わなければなりません。相続税は土地の価格によって税額が変わってくるため土地の価格を正しく評価する必要があります。
しかし土地の評価方法が一定でなければ不公平が生じます。そこで相続税の計算の際、相続税路線価を使うことによって、画一的な評価ができるようになります。
②遺産分割協議で利用する
誰がどの相続財産を取得するのかを、話し合いで決める手続きを遺産分割協議といいます。遺産分割協議において、相続人全員の合意があれば土地の評価額について相続税路線価を利用することができます。
土地の評価については、どのような評価方法を使って話し合いをしなければならないという法律の定めはありません。遺産分割において、続税路線価で分割してしまうと、仮に2人で均等に分割しようとしている場合、土地を低く評価できた人のほうが実質多く遺産を手に入れることができてしまいます。そのため実勢価格を参考に分割することが多い傾向にあります。
③贈与税の計算で利用する
贈与税の計算においても、相続税路線価を利用することができます。名称が贈与税のため、贈与税特有の計算方法があると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一般的に贈与税は相続税の一種とも考えられているため相続税路線価を利用することになります。
路線価の確認方法とは
ここでは路線価の3つの確認方法について解説していきます。
①国税庁のホームページから
全国の路線価図・評価倍率表は下記の国税庁のホームページから参照することができます。住所を検索すれば誰でも無料で日本全国の路線価を調べることが可能です。下記のリンクから国税庁の路線価サイトに進んでいただき、都道府県、市町村、丁番地という順に入力してみてください。
【出典】国税庁HP:http://www.rosenka.nta.go.jp/
②税務署で閲覧する
インターネット環境がなかったり、パソコンなどの操作が上手くできない方は、最寄りの各税務署で直接閲覧する方法もあります。各税務署には管轄区域内の相続税路線価図が置いてありますので、その管轄区域内の路線価を申請することによって無料で閲覧が可能です。
③相続案件に詳しい会計事務所
会計事務所は税金については全てお任せしていいのかというと実はそんなことはありません。税金は所得税、法人税、相続税、消費税など様々な種類があります。それぞれの会計事務所に得意な税金とそれほど得意ではない税金があります。
そのため相続税に詳しい会計事務所には相続税に特化している事務所であることや仮に税務調査になったとしても調査経験が豊富である会計事務所が相続税に詳しい傾向があります。
相続案件に詳しい会計事務所であれば納税者が有利なように土地の評価額などを計算してくれるためそのような会計事務所に相続案件を依頼することをおすすめします。
路線価図のチェックポイント
ここでは路線価図のチェックポイント3つについて解説していきます。
①毎年変わるので調べたい年度と一致しているか
路線価図は毎年8月頃公表されます。数字も毎年変わりますので、調べたい年度と一致しているか確認が必要です。例えば路線価図を見ると左横に28 33029 などという数字が記載されています。
これは平成28年度の33029ページという意味です。
②路線価の単位、地区と借地権割合の適用範囲
路線価図には路線価の単位、地区と借地権(※)割合の適用範囲を示す記号が記載されています。路線価は千円単位で記載されています。また、相続の際には借地権についても課税対象となります。そして借地権の課税金額を決めるために、借地権割合という所有権価格に対しての借地権の割合を発表しています。相続税を計算する場合は、これらの数値を調べたい土地に当てはめて確認する必要があります。
※借地権:実際に土地を所有していなくてもその土地を使用できる権利
③アルファベットで記載される借地権割合
路線価図では路線価の横にA〜Gまでの記号が記載されています。このアルファベットは借地権割合を示す記号です。A90%、B80%、C70%、D60%というように10%ずつ下がったパーセンテージとなっていきます。
例えば400Dという記載がある場合は、その土地の評価額は1平方メートルあたり400,000円という金額で借地権割合を計算する場合は60%であることを意味しています。
路線価方式と倍率方式
ここでは2つある路線価の評価方式について解説していきます。
①路線価方式
路線価が定められている地域は路線価を使って土地を評価します。これを路線価方式といいます。
②倍率方式
土地の中には路線価が定められていない地域も存在します。倍率方式とは、このような土地の評価額を計算するために固定資産税評価額(固定資産税評価額は都税事務所、市区役所又は町村役場で確認することができます)に、国税局長が定めた一定の倍率をかけて土地の評価額を計算する方法のことをいいます。
路線価方式で使われる画地調整率
路線価方式では、路線価をベースに土地の奥行によって調整する奥行価格補正率や2つの道路に接している土地の評価額を調整する側方路線影響加算率などを使用して評価額を算出します。各種補正率については後述します。
土地の使い方で変わる3つの計算方法
ここでは土地の使い方で変わる3つの計算方法について解説していきます。
①自用地の場合
一般的に自用地とは、自分で利用している利用制限のない土地(他人が使用する権利のない土地)のことをいいます。自用地の計算方法は次のとおりです。
- 路線価×宅地面積 =字用地の評価額
②土地に貸家がある場合
自分で使っている土地にアパートなどの貸家を建てている場合は、土地の評価額から貸家に住んでいる人の権利の分の金額を差し引いた残額が評価額となります。
計算方法は次のとおりです。仮に東京都の場合の土地とした場合の借家権割合は一般的に30%なので、ここでは30%をあてはめます。
- 路線価×宅地面積×(1 – 借地権割合 × 借家権割合 30%×貸借割合 )= 貸家建付地の評価額
③貸宅地の場合
土地自体を他人に貸している場合は、貸宅地となり計算方法は次のとおりとなります。
- 路線価×宅地面積×(1 – 借地権割合) = 貸宅地の評価額
路線価方式の具体的な計算方法
ここでは路線価方式の具体的な計算方法について解説していきます。
計算手順
土地の評価額は1平方メートルあたり評価額×宅地面積で求められます。なお1平方メートルあたりの土地の評価額は路線価×奥行価格補正率で求めます。
奥行価格補正率とは
土地が道路に1面しか面していない場合、奥行が著しく長かったり、短かったりする場合があります。このような土地ですと、活用しにくいことから評価額が下がります。この評価額の調整に使われるのが奥行価格補正率です。
側方路線影響加算率とは
正面と側面の2つの面が道路に面している土地は一般的に評価額が高くなります。この場合の評価額の調整に使われるのが側方路線影響加算率です。
土地の形状、接道状況による計算方法の違い
ここでは土地の形状、接道状況による計算方法の違いについて解説していきます。
角地の計算方法
正面と側面が道路に面している土地を角地といいます。十字路やT字路に接している土地になります。角地は2つの道路に面しているため計算方法は次のとおりとなります。
- 正面路線価×奥行価格補正率 + 側面路線価× 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率
準角地の計算方法
準角地とは接している道路が十字路やT字路ではなく、L字型になっている道路に面した土地のことをいいます。角地よりも利便性は落ちるため、側方路線価加算率が変わりますが計算式は角地と同じ次のような形になります。
- 正面路線価×奥行価格補正率 + 側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率
1面道路の土地と2面道路の土地の計算方法の違い
土地は1面のみが道路に面している場合よりも2面が面しているほうが利便性は高いです。1面道路の土地と2面道路の土地の計算式は次のようになります。なお2面道路の土地の場合の正面路線価と裏面路線価の区別は、それぞれの道路の路線価に奥行価格補正率をかけて金額が高い方が正面路線価、低い方が裏面路線価となります。
1面道路の土地の場合
- 路線価×奥行価格補正率
2面道路の土地の場合
正面路線価×奥行価格補正率+裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率
- 二方路線影響加算率というのは1面道路よりも2面道路のほうが利便性が高いため、評価額に加算されるようなイメージとなります。
最後に
ここまで路線価の見方について解説してきましたがいかがでしょうか?本来税金には不公平があってはいけないのですが、相続税については知っているのと知らないのとでは損をしてしまう場面もあります。
特に不動産の評価方法には様々な種類があります。評価方法に種類があることで混乱してしまうかもしれませんが、選択する評価方法によっては税額が大幅に変わってくるので注意が必要です。もしこの記事で路線価について興味をお持ちいただいて、分かりやすいと感じていただき少しでも参考になれば幸いです。
監修者:添田裕美(税理士)